「家庭菜園を始めたけど、どうやって作業したらいいか分からない。」
「肥料は何を、どのくらい入れたら良いか教えてほしい。」
「見よう見まねでやってみたけど、これでいいのかな・・・。」
この記事はこのような方に家庭菜園の定植前にする作業を解説します。
農業に関わる仕事を10年以上している「いのっぷ」です。家では娘と家庭菜園をしています。
家庭菜園を始めるためには、以下の工程があります。
- 土作り
- 肥料入れ
- 耕す
- 畝、ベッド作り
- マルチ張り
農業に慣れていないと、調べてみても具体的にはイメージしにくいのではないかと思います。
経験の無い方でも、実践できるように分かりやすく説明するので、家庭菜園を始めてみてください。
土作り
野菜栽培に向く土と向かない土があり、庭の造成に使われる真砂土などは野菜の栽培には向きません。家庭菜園をするには土作りをする必要があります。
しかし、土を改良するのは初心者には難しく、時間がかかります。(継続的に堆肥を入れて数年かけて改良する。)
野菜が良く栽培できるようになるまで、何年もかかるのはちょっと。。。
そこでオススメは土を入れ替える事です。
家庭菜園を予定している場所の土を掘り出して、そこにホームセンターでも売っている黒土を入れてあげます。これは重労働なので大きくても2坪(6.6㎡)くらいが限度だと思います。掘り出した土を処理するのにお金がかかるので同量の黒土と混ぜ合わせて戻すのも良いです。
土を戻す場合は量が増えるのでレンガや土ストッパーなどで囲ってレイズドベッドにして土を入れます。少し高くなるので水はけが良くなる効果もあります。
土の入れ替えは大変だなと思った人も居ると思いますが、プランターであれば培養土を買ってくるだけで良いので簡単です。家庭菜園を試しにやってみる人はプランターが良いですね。
ウチは外構工事のときにレンガで囲って、土の入れ替えをやってもらいました。プロにお願いするのもオススメです。
肥料入れ
土の用意ができたら次は肥料を入れてあげます。
入れる肥料は大きく分けて3つです。
- 堆肥
- 石灰(ph調整)
- 三要素肥料(チッソ、リン酸、カリウム)
植える一か月前に堆肥を入れて耕し、一週間前に石灰と三要素肥料を一緒に撒いて耕せば肥料入れは完了です。
堆肥は「牛ふん堆肥」を使う
肥料の効果がある堆肥は家畜のふんを発酵させた堆肥です。主なものは「牛ふん堆肥」「豚ふん堆肥」「鶏ふん堆肥」などがあります。
その中でも初心者の人は「牛ふん堆肥」を使いましょう。入れる量は年に1回、2~3kg/㎡(5~7.5ℓ/㎡)です。家庭菜園を始めたばかりの畑はこの範囲で多めに入れましょう。
理由は緩やかに肥料効果が出るので失敗しにくいからです。肥料成分が複数年にわたってじっくり効くので、多少入れ過ぎても野菜への影響が出にくいです。
使用する目的は家庭菜園をしやすい肥えた畑にするためです。毎年入れてあげることで土の中から肥料成分がジワジワ溶け出してくる状態になり、野菜を栽培しやすい畑になります。
堆肥を入れるタイミングは苗を植え付ける一か月前くらいです。ゆっくり溶け出すので早めに入れてあげます。少し臭いが気になるかもしれないので、堆肥をまいたらすぐに耕してあげましょう。
「牛ふん」というと抵抗があるかもしれないけど、売っているものは発酵して原型はないので大丈夫ですよ。
石灰は「苦土石灰」を使う
石灰は畑を野菜の栽培に適した弱酸性pH6~6.5(中性が7.0)に調整するために入れるカルシウム肥料です。主なものは「苦土石灰」「消石灰」「かき殻石灰」などがあります。また、それぞれに粒状と粉状の商品があります。
その中でも初心者の人は粒状の「苦土石灰」を使いましょう。入れる量は100~200g/㎡程度です。
理由は効果が穏やかなので失敗しにくく、粒状が扱いやすいからです。
「苦土石灰」はアルカリ性の強さが中程度で多少入れ過ぎても土壌がアルカリ性になりにくいです。(アルカリ性は野菜栽培に適さない)
ゆっくり溶けるのでチッソ肥料と一緒に撒けますし、水を含んでも発熱しないので苗をすぐ植えられます。
肥料成分としても苦土(=マグネシウム)は光合成する葉緑素の材料になり、石灰(=カルシウム)は細胞壁の材料となります。葉が大きく成長するキャベツなどの葉菜では多く必要となります。
粒状の製品を勧める理由は扱いやすいので撒きムラがでにくく、粉状より粒が大きくじわじわ溶けるため効き方が穏やかになるからです。
三要素肥料は「化成肥料」を使う
三要素とは野菜栽培で必要な「チッソ、リン酸、カリウム」です。
- チッソ・・・葉肥
- リン酸・・・実肥
- カリウム・・・根肥
と言いますね。
植物が生育に必要な成分のうち、これらはたくさん使うので植える前には三要素肥料を入れてあげます。
大きく分けると2種類あり「化成肥料」と「有機肥料」があります。
その中でも初心者の人は「化成肥料」を使いましょう。
化成肥料の成分量は商品により色々あるのですが、「8-8-8」はホームセンターなどで良く置いてあります。
この意味は「チッソ:リン酸:カリウム=8%:8%:8%」の割合で含まれているという意味です。なので化成8-8-8を1kg施用するとチッソ:リン酸:カリウムを80g:80g:80gを入れられるという事です。
さらに、本には面積あたり○○gのチッソ成分量を目安に入れましょう。(○○g/㎡)と書いていることが多いので、肥料を何gまいたら良いのか計算がややこしいです。
なので、ざっくり計算してみました。
葉根菜類(キャベツ、ダイコン、コマツナなど)は
「チッソ成分量20g/㎡を目安に化成8-8-8の場合250g/㎡」
果菜類(トマト、ナス、キュウリなど)は
「チッソ成分量15g/㎡を目安に化成8-8-8の場合190g/㎡」
ナスはそれに株あたり一握り、キュウリ、カボチャなどウリ科は二握りを植える所にまんべんなく撒いてください。トマトはそのままでOK。
(化成肥料の一握りはおおよそ30~40g。心配ならば自分の一握りを測っておくと便利)
↑を畑の面積を測って肥料をまいてください。
縦2m×横1mであれば2㎡ですね。多少違っても問題ないので、おおざっぱにキリが良い数字で測りましょう。
本を参考にして肥料を正確に入れようとするとトマトは何g、ナスは何g、キュウリは何gと細かく分かれてしまいます。同じ野菜ばかり植えるならばそれでも良いのですが、家庭菜園では色々な野菜を作りたいですよね。
マジメに施肥量を品目ごとに変えようと思うと嫌になってしまうので、ここで挙げた量を撒いてください。それぞれの品目に最適量ではないかもしれませんが、家庭菜園としては充分に良いものができますよ。
先に大まかに肥料を入れるメリットとして、スケジュールが楽になります。事前に植える野菜を決める必要がないので、植えるときにホームセンターへ行って苗を見ながら選べます。
子供と一緒に何を植えようか話しながら決めると楽しいですね。子供も自分で選んだ野菜を植えられると嬉しいと思います。
耕す
堆肥や肥料を撒いたら良く耕します。
耕すことで以下の効果があります。
- 肥料を均一に混ぜ合わせる。
- 固まった土を砕いて、土壌の通気性、水はけを良くする。
- 空気を入れること微生物が活性化して有機物の分解が進む。
野菜は通気性が良い土壌が好きなものが多いです。酸素が不足すると根腐れを起こして生育が弱ってしまいます。
微生物も酸素を利用して有機物を分解しています。堆肥を肥料成分として野菜が吸収できるようになり、分解の過程で腐植が作られます。これは土壌の中で土の粒をくっつけるノリのように働いて団粒構造を形成します。団粒構造の土壌は通気性、保水性、保肥力が優れ、野菜の栽培に適しています。
家庭菜園での耕す方法は「スコップ」がオススメです。先が尖った剣先のスコップで、ある程度大きなものを使いましょう。
畑の端からムラがないようにスコップで土をひっくり返すように耕します。耕すというとクワを使うイメージがあるかもしれませんが、扱いが難しく怪我をするおそれがあるので初心者の人はスコップを使うほうが良く耕せます。
畝立て、ベッド作り
耕したら次は畝やベッドを作ります。
↑のほうでも言いましたが野菜は通気性が良い土壌が適しているので、高畝にしてあげましょう。高さは大体で良いですが10~15cmほど土を盛ってあげます。
地面から少し高いだけで強雨が降って水が溜まった場合でも畝上は水に浸からずに済みます。もし、浸かっても早く乾くので根腐れを抑えられます。
高畝にすると乾燥し過ぎるデメリットがありますが、家庭菜園の規模ならば水やりも簡単なので問題ありません。
畝を立てる手順は↓の通りです。
- 畝やベッドの寸法をメジャーで測る。
- 畝の両端にヒモを張る。
- ヒモにそって平クワで土を盛りながら溝を掘る。
- ベッドは慣らしてから上と側面を押さえて鎮圧する。
①畝やベッドの寸法をメジャーで測る
まずは圃場の寸法を測ります。しっかり測ることで家庭菜園の見た目が良くなりますし、真っ直ぐに畝ができていると作業がしやすいのでしっかり測りましょう。畝幅は一列植えの畝だと50cm、2列以上植えるベッドだと80~100cmにします。
②畝の両端にヒモを張る
畝の両サイドに端から端までヒモを張ります。圃場が大きければヒモを巻き取る「田引」を使うと良いですが、小さい家庭菜園であれば適当な棒にビニール紐を結んであげれば大丈夫です。
③ヒモにそって平クワで土を盛りながら溝を掘る
実際に畝を切っていきますが、「平クワ」を使います。耕す目的のクワでは畝を立てにくいので注意してください。張ったヒモにそって溝を切っていきます。高畝にするので土は畝にする側に入れます。
④ベッドは慣らしてから上と側面を押さえて鎮圧する
溝が切れたらベッドの上を平らにならします。真ん中を高くして、カマボコ型にするとベッド上に水が溜まりません。
次に、崩れないように上部と側面を押さえて固めます。これを「鎮圧」と言い、植えた後に乾燥しにくくする効果もあります。ならすにはレーキを使いますが、小さい面積なら適当な板で充分です。
マルチ張り
ベッドにした場合はマルチを張るのがオススメです。家庭菜園でマルチを張るなんて大袈裟に思うかもしれませんが、意外と簡単に張れますし、栽培しやすくなりますよ。
マルチのサイズはベッド幅+50cm程度(ベッド80cmなら130cm)の物を使いましょう。土を被せて押さえる余裕が必要だからです。
- マルチストッパーでベッドの端に固定し、伸ばして少し長めにカットする
- 両端から強く引っ張り、四隅と真ん中をマルチストッパーで固定する
- ベッドの両端と横を土で押さえる
①マルチストッパーでベッドの端に固定してカットする
マルチを少し出して固定します。
伸ばし過ぎると風であおられたりして、作業がしづらくなるので、少しずつ伸ばしましょう。
②四隅と真ん中をマルチストッパーで固定する
マルチを引っ張りながら伸ばし、ストッパーを入れていきます。
ベッドの端まできたらピンっと張ってストッパーで固定し、マルチをカットしましょう。
③ベッドの両端と横を土で押さえる
ベッドの両端を土で抑えます。横側もマルチのすそを足で踏んで張りながら土で抑えてください。念のために軽く土を上に乗せておくと風で飛ばされにくくなります。
これで完了なので、意外とやってみると簡単だと思います。
また、マルチ張りは2人居るとやりやすいです。
子供に手伝ってもらえれば、少しマルチを引っ張ってくれるだけでも助かりますよ。
最後に
土作りや肥料入れなど、畑の準備は最もどうしたら良いか困るポイントではないかと思います。
ここで説明した通りにやれば、後は苗を買ってきて植えるだけです。
畑を決めるところから収穫まで、家庭菜園の始め方を解説しています。以下の記事も読んでもらえると嬉しいです。